化粧品、医薬品、健康食品成分

鉄の特徴と役割

今回のテーマは「鉄分」について特徴や役割をご紹介致します。

下記動画テキストです。
鉄の特徴と役割【鉄分の吸収と働き】【♯161】

鉄の特徴と役割【貧血の種類】【♯162】

<鉄とは(参考:厚生労働省、健康長寿サイト)>
鉄は地球上で最も豊富な金属のひとつであり、多くの生命体やヒトの正常な生理機能にとって必要不可欠な物質です。
また、鉄は健康維持に必要な多くのタンパク質や酵素の構成成分に対しても非常に重要です。

ヒトでは、鉄は酸素輸送に関わるタンパク質に不可欠な成分であり、また、細胞の成長や分化の調節をします。
鉄が欠乏すると細胞に十分な酸素が供給されず、疲労や作業能率の低下、免疫力の低下を生じます。

鉄分は体の中に3g前後あるといわれています。
そのうち約65%は血液中のヘモグロビンの構成成分となり、酸素運搬という重要な役割を果たしています。

赤血球は、細胞の中に「ヘモグロビン」というタンパク質を持っています。
これは「ヘム」という鉄を含んだ色素と、「グロビン」というタンパク質からできおり、赤血球の重量の3分の1を占めています。
鉄は酸素とくっつきやすい性質(酸化)があるため、鉄分を含むヘモグロビンによって酸素が全身に運ばれます。

<鉄分の吸収と働き>
食品中に含まれる鉄分は、ヘム鉄と非ヘム鉄とに分けられます。
たんぱく質と結合しているヘム鉄は肉や魚などの動物性食品に多く含まれています。
ヘム鉄以外の無機鉄を非ヘム鉄と言い、こちらは植物性食品に多く含まれています。

鉄の吸収率は低く、ヘム鉄15~35%、非ヘム鉄2~20%とされています。
(出典により%は多少異なる)
非ヘム鉄より”ヘム鉄”の方が吸収率が高いです。

非ヘム鉄の吸収率は食品中の様々な成分によって大きく左右されます
アスコルビン酸(ビタミンC)、たんぱく質、アミノ酸などと同時に摂取することで吸収率が高まります。
タンニン(茶など)、カルシウム、ポリフェノール類、フィチン酸塩(豆科植物および全粒穀物に含まれる)などは非ヘム鉄の吸収を低下させます。

鉄の働き
・酸素を運搬する
・細胞への酸素の取り込みに関与する
・エネルギー産生に関与する
・成長を促進する
・美肌に働く
・感染症などの病気に対する抵抗力をつける
など

<鉄の食事摂取基準>
男性約6~7mg、女性約8.5~11mgです。

<鉄欠乏貧血(参考:NIPROサイト)
鉄が、体の中で足りなくなると、いわゆる鉄欠乏性貧血と呼ばれる病気にかかってしまうのですが、この病気は、数ある貧血の種類のうち、9割以上を占めるとされ、特に若い女性の間では4人に1人が、この病気になっているとさえいわれています。

先ほど、“鉄分は体の中に3g前後あるといわれています。
そのうち約65%は血液中のヘモグロビンの構成成分となり、酸素運搬という重要な役割を果たしています。”とお伝えしました。
残り約40%の鉄はヘモグロビンをつくるのに当面は必要でないことから、肝臓や脾臓などに“貯蔵鉄”として蓄えられています。

何らかの理由でヘモグロビンをつくる鉄が不足すると、まずこの貯蔵鉄が使われ始めます。それでも足りない時は“血清中の鉄”が使われ、さらに足りない場合は“組織鉄”までも使われるようになります。

このように体内の鉄が不足するということは、すなわちヘモグロビンをつくる材料が減ってしまうということですから当然、ヘモグロビンはうまくつくられなくなり、その量も減少していきます。
そうなると、全身の組織や臓器に酸素が行き渡らなくなり、体内がいわば酸欠状態になってしまいます。
これが、いわゆる鉄欠乏性貧血です。

このほか、ヘモグロビンが減少する理由としては
・胃潰瘍や痔核、あるいは女性の場合には月経による出血
・赤血球やヘモグロビンをつくる機能が満足に働かない
・赤血球やヘモグロビンが壊れやすい
・ガンや肝臓病などで造血作用が妨げられる
などが挙げられます。

<鉄分不足に現れやすい症状>
・動悸
・息切れ
・だるさ
・頭が重くなる
・疲れやすくなる
・あざが出来やすくなる
・味覚がおかしくなる
・顔色が悪くなる
・胸の痛みがある
・爪がもろくなる
・口角炎や舌炎
・飲み込みづらくなる
・集中力低下
・イライラ感
など

また、異食症という、氷をがりがりと噛み砕きながら食べたり、食べ物で無い物を食べたがったりする症状が出ることもあるようです。

<鉄補充に関する知見>
鉄補充は、食事だけでは許容範囲の期間に欠乏した鉄を正常な値まで回復できない場合に適応となる。
鉄欠乏性貧血の臨床症状が認められる場合は、鉄補充が特に重要となる。
経口鉄補充療法の目標は、十分量の鉄を補充して正常な鉄貯蔵量に回復させるとともに、不足しているヘモグロビンを補充することである。
ヘモグロビン濃度が正常値より低い場合は、鉄の貯蔵形態である血清フェリチン濃度を測定することが多い。女性では、血清フェリチン濃度が15 μg/L以下であれば鉄欠乏性貧血が確認されたことになり、鉄補充が必要となる可能性がある。

<貧血(参考:日本臓器製薬)>
貧血とは、血液中に含まれるヘモグロビンの量が減少した状態のことです。
ヘモグロビンは、酸素をからだのすみずみまで運搬するという大切な働きをしているため、ヘモグロビンが減少すると全身が酸素不足になり、疲れやすい、めまい、動悸、息切れ、立ちくらみ、頭痛などの症状があらわれます。
貧血の70%は、ヘモグロビンの重要な材料のひとつである鉄分が不足することによる鉄欠乏性貧血です。

貧血の種類
①鉄欠乏性貧血
ヘモグロビンの主な材料である鉄が不足し、ヘモグロビンが作られなくなるためにおこる貧血です。その原因は大きく4種類に分けられます。
・鉄摂取量の不足
欠食・偏食、無理なダイエット、外食・インスタント食品の多食などの食生活の乱れ等の原因により、鉄や栄養素が不足します。
・鉄需要の増加
妊娠・授乳期は胎児の成長や母乳分泌に鉄が多く必要になるため不足が起こりやすくなります。
また、思春期女子では急激な成長により血液量が増加し、鉄の需要も増加して貧血になることがあります。
・過剰な鉄損失
月経(生理)過多や潰瘍、痔、ガンなどによる消化管からの出血が原因となります。男性の貧血の場合は、まず消化管出血を疑います。
・吸収障害
胃切除などにより胃酸の分泌が不足し、鉄の吸収が障害されます。

②再生不良性貧血(参考:メディカルノート)
再生不良性貧血とは、骨髄にある造血幹細胞と呼ばれる血液細胞の種が減少することにより、白血球、赤血球、血小板といった血液細胞の全てが減少する病気です。
白血球は細菌などから身体を守る細胞、赤血球は肺から取り込んだ酸素を臓器に運搬する細胞、血小板は出血を止める細胞です
医学的にはこのような状態を汎血球減少といいます。

③悪性貧血(巨赤芽球貧血)
巨赤芽球性貧血とは、ビタミンB12や葉酸が欠乏することで発症する貧血です。血液中に存在する赤血球は骨髄の中でつくられます(造血)が、ビタミンB12や葉酸が欠乏すると造血機能に悪影響が及び、貧血を発症します。

貧血症状以外にも、味覚障害や食欲低下、体重減少、白髪などの症状が現れることがあります。さらに、「亜急性連合性脊髄変性症」と呼ばれる神経疾患を合併することもあります。治療には、根本的な原因となっているビタミンB12や葉酸欠乏の改善が求められます。

④溶血性貧血
赤血球の寿命はおよそ4か月と考えられていますが、赤血球が寿命よりも早く壊されることにより引き起こされる貧血を溶血性貧血といいます。
だるさや息切れ、めまいなどの症状に加えて、黄疸や尿がコーラのような色になるなどの症状もみるようになります。

以上のように一口に貧血といっても、多種多様です。
貧血をひとつの病気としてとらえるのではなく、さまざまな基礎疾患が原因となって起こるひとつの兆候としてとらえる必要があります。
貧血の中でもっとも多く見られるのが鉄欠乏性貧血で、貧血全体の60%~80%を占めています。
鉄欠乏性貧血は食事とのかかわりも大きく、食事療法が有効な治療手段となっています。

一日に摂取したい鉄分量を毎日継続させる食生活は、少し難しいと思いますので、鉄不足を感じる方や、血液検査で貧血気味の方は、鉄剤を摂取したり、鉄鍋やスキレットを活用するのも良いと思います。

スキレットや鉄鍋を使う際は、酸性食品を加えると鉄が溶けやすくなるので効果的のようです。

鉄は不足しやすく体内に吸収しにくい成分ですので、普段の食生活など意識してみて下さいね。

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